【有料記事公開!】『オンライン資格確認』について現場医療従事者にリアルインタビュー_クリニックの現状と今後の課題について
『オンライン資格確認』について
リアルインタビュー
~クリニックの現状と今後の課題~
2023年4月より『オンライン資格確認』の導入が義務付けされ、各医療機関にてその対応が開始させていることと存じます。オンライン資格確認が導入され、実際に医療の現場では何が起きているのでしょうか?今回、実際にクリニックにてオンライン資格確認の対応を実施している都内精神科勤務の医療従事者Mさん(30代女性)に対し、日本ドクター・クリニック協会がインタビューを実施し、医療現場のリアルな声から、現状と今後の課題について明らかにしました。
協会事務員(以下、協);本日はお時間をいただきありがとうございます。早速ですが、クリニックではどのような業務を担当していますか?
Mさん;クリニックでは受付スタッフとして、患者さんの受付を主に実施し、その他電話対応や書類作成などを担当しております。
協;オンライン資格確認(以下、オン資)の対応はいつから始めましたか?
Mさん;当院では、2023年3月から『マイナタッチ』という機器を導入し、初診再診患者共にオン資対応を開始しました。実際にマイナンバーカードで受付をする患者さんは、来院患者の全体のうち1割程度という感覚です。マイナンバーカードを持っていても、今まで通り保険証で受診をされる患者さんが多い印象です。
協;マイナンバーカードで受付をされる方はどんな方が多いでしょうか?
Mさん;みなさん口をそろえて言うのは、「マイナンバーを使った方が安くなるんでしょ?」ということです。金銭面にメリットを感じたり、新しい受付方法に興味がある患者さんが、マイナンバーカードを使って受付をしているイメージです。男性や女性、年齢層など、『マイナンバーカードで受付をしやすい属性』というのは現時点ないかな、という感じです。
協;マイナンバーで受付する患者さんが、機械の操作等で戸惑われたりしてないでしょうか?
Mさん;初めて使う方はやはり少し戸惑いがありますので、マイナタッチまでご案内し、「ここでマイナンバーカードの読み取りをお願いします。」とご案内しております。マイナンバーカードをクリニックのスタッフが預かることはできませんので、ご自身で操作していただく為に、少し操作の説明が必要な患者様もいらっしゃいますね。
協;オン資対応で、受付業務のオペレーションに変化はありましたでしょうか?もしあれば教えていただければ幸いです。
Mさん;オペレーションはだいぶ変わりましたし、煩雑になりましたね。以前は受付時に、患者さんには診察券と月に1度保険証をご提出いただいておりましたが、オン資が始まってから、保険証とマイナンバーカードが混雑するようになりました。マイナンバーカードによる受診の場合、マイナンバーカードを毎回確認しなければならないため、それと統一して保険証で受診の方にも保険証を毎回提出いただくようオペレーションを変更し、受付対応をなるべく効率化しております。そのほかにも、一度でもマイナンバーカードを使って受付を行った方には、診察券にシールを張ることで判別できるようにし、シールが貼ってあったら、「マイナンバーカードで受付をお願いします。」とマイナタッチにご案内しております。
協;かなり業務のオペレーションが変化しましたね…。マイナンバーカードと保険証、どちらも併用しながら受診する患者さまにはどのように対応しているのでしょうか?
Mさん;切り替えは可能なのですが、その場合当院では保険証の画像保存をするようにしています。マイナンバーカードはオンライン上でカードに紐づけられている保険証情報を確認し、有効かどうかを確認するのですが、これにはタイムラグが1か月ほどあるとも言われています。なので、クリニック側で『資格有効』と表示されても、実際は手続き中で無効なときもあるのですが、クリニックで有効と表示されている以上、こちらにその処理が降りかからないようになっています。 しかし紙やプラスチックの保険証の場合、従来通りオンラインで資格確認をしているわけではないため、もし情報等に誤りがあり無効な保険証で受診をされた場合に、画像保存をすることで、「この保険証は間違いなく患者さんが出した保険証で、きちんと確認もしています。」という証拠確保をしています。
協;併用されると少し対応に困る部分があるのですね…。そのほか、オン資対応の不安や今後の課題について、何か感じていることはありますか?
Mさん;現在初診でマイナンバーカードを使う方は、使う上で不安もあるのでしょうか、私たち受付スタッフに声をかけたうえでマイナタッチ(マイナンバーカードの読み取り)をしてくれます。しかし今後、マイナタッチの受付に患者さん自身が慣れてきて、まるで電車の改札口のように、初診の方が受付に何も言わずにマイナタッチをすまし、待合室で待っているような状況が生まれたらと考えますと、不安を感じます。特に土日などは患者数が多く待合室が人であふれているので、そのような患者さんの存在に我々スタッフが気づかず、ずっとお待たせしてしまう可能性がありますので…。
協;確かにマイナンバーカードを受付に提出することはできませんし、そのほか初診の方が受付に提出するものはほとんどないと思いますので、『初診患者の来院に気づけない』という状況が今後生まれるかもしれませんね。
Mさん;はい。他には、オン資対応ができる機器『マイナタッチ』が現状1台しか当院にないため、今後マイナンバーカードによる受付患者が増えた場合、受付をするまでに大渋滞が発生する恐れがあります。そんな時に『顔認証が上手くいかない』『暗証番号がわからない』等の患者様がいらっしゃったらと思うと、その時の受付の様子はあまり想像したくないですね…。
協;ここまで話しをお伺いして、やはりオン資対応には苦労されているとのことですが、オン資が導入されたことによるクリニックのメリットは、何かありますか?
Mさん;そうですね、しいて言えば、レセプトの返戻が減るのかも?という期待です。先ほども話しましたが、オンラインでの資格確認では、タイムラグがあるとはいえ、クリニックのPCに資格が『有効』と表示されれば、紐づいている保険証情報で請求をすることができます。これまで紙やプラスチックの保険証では、患者さんが誤って無効な保険証を提出し、それによって返戻が起きることが多々ありました。特に転職活動中や退職済みの方に多いですね。その点オン資では、確認の手間や「本当にこの保険証、有効?」と不安に感じる機会が減るのではないかと思います。
協;ありがとうございます。最後に実際に現場スタッフから、このオン資対応について挙がっている声などはありますか?
Mさん;みんな、「国から言われていることだから、大変だけどしょうがない…」という感じです。既にある業務の進め方の中に、いかにうまく組み込んで対応するか?なかなか骨の折れる作業ですし、今後も何かトラブルが起きるたびに見直していく必要があるのかなと思います。このオン資対応がきっかけで閉院するクリニックもあるそうですが、それも納得です。当院ではすでに電子カルテの導入など診察業務のデジタル化は進んでおりましたが、それでもこのオン資の導入はかなり苦労しました。それらの土台が一切ないクリニックだとオン資導入の難易度はかなり高いのかと…。閉院して困るのは患者様でもあると思うので、その患者様のことを考えると心苦しいですね。特に精神科・心療内科では、患者さんと医師・スタッフの信頼関係で大事だと思いますので。
協;この度はお時間いただき大変ありがとうございました!
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